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* ブラックストライカー 第2話(前編)

日時: 2011/02/24(木) 01:22:47 メンテ
名前: ぶんろく

今回は過去編です
随分長くなってしまった・・・ような
 
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* Re: ブラックストライカー 第2話 ( No.1 )
日時: 2011/02/24(木) 01:46:58 メンテ
名前: ぶんろく

二ヶ月前――――英国陸軍南方基地 周辺

レイブ・ローウェルは体を震わせ、ただ底抜けの恐怖を味わっていた。

コクピットの正面モニターに映し出される、目を覆いたくなるような地獄絵図。
豪雨が降り注ぐ荒野、そこに倒れ伏す人型兵器の骸、骸、骸。総計二十三機。
5型と6型、キャノンショルダー、そして羅甲――――戦闘に参加した、レイブ機を除く全てである。
傍目には数を把握できないほどに、どれも死に様は惨たらしかった。全身を蜂の巣にされ、切り刻まれ、五体満足の機体は一つもない。
唯一生き残ったレイブの6型も、頭部半壊、左腕欠損、右脚膝関節破損という、もはやまともに動くことすら出来ない程の損傷だ。
飛散した装甲とオイルが地面を満遍なく埋め尽くす光景に、レイブは思わず顔を背ける。
しかし、激しい雨はそんな惨状を見せつけるかの如く、炎と土の煙を次々とかき消していく。

「ぁ・・・・・・」

最高に狂った戦いだった。なにせ両陣営共に、敵機は一機も撃墜していない。
突然に、『味方機同士で撃ち合いを始めた』結果がこれだ。
通信が途絶して、理不尽極まりない状況下に置かれた者達の、錯乱の叫びを聞かずに済んだのは不幸中の幸いだった。
全幅の信頼を寄せていた隊長。
入隊時から十年近く生死を共にしてきた戦友達。
そして、両親を失ったレイブにとって唯一の家族――――自分の後を追って軍に入隊したばかりの弟。
心の拠り所だった者達が一人残らず、理解不能な現象により散っていった。しかもその内数機は、自らの機体が手にかけている。
現実を受け入れきれず、レイブは泣くことも出来ずに怯えた声をあげる。

この惨状を作り上げた張本人、レイブ機の後方に立つ白い巨人は――――今は不気味なほどに平静を保っていた。
全身から機体冷却による蒸気を噴き、エンジンを安定稼働領域へと戻しつつ、頭部をゆっくり回転させながら、冷静に周囲を見渡す。何の感情も持ち得ぬ非情な態度だった。

「お前は一体何だ・・・・・・何処の所属で、何故こんな事を!」

戦場に現れた謎の機体。純白の装甲を纏ったチェスのキング。全長三十メートルを超える、縦に細長い不気味な人型だ。
後頭部と両腕から計三本のブレードアンテナを突きだして、それは電波塔のように直立していた。
いや、巨人の役割は実際に電波塔そのものだった。アンテナから発せられた強力な怪電波により、全てのマシンがコントロールを奪われ、自らの同胞に銃口を向ける狂戦士と化した。レイブ機が今こうして暴走を止めているのも、全ての対象物が完全に沈黙したからであった。
一体何故、地球とアムステラ、双方の殲滅に及んだのか。理解は及ばない。理解できたところで、納得できる訳もないが。

「答えろ・・・・・・!」

本当なら勧告というプロセスを無視してマシンガンを乱射したいところだったが、機体のコントロールは今もなお支配され続けている。
強力なジャミングにより通信回線も遮断されたままだ。悲しいことに、この叫びには激情を吐き出す以上の意味は存在しない。

「くそっ・・・・・・制御系を完全に掌握されている!」

コクピットハッチにはロックがかかり、操縦桿も各種コントロール・パネルも手動操作を全く受け付けない。まともに機能しているのは外界を映し出すメインモニターぐらいだ。エンジンも未だ稼働状態にあるようだが、操縦できないのであれば実質的な停止と何ら変わりはない。
レイブの怒りと悲しみに反し、6型は教師に怯える生徒の如く、身じろぎできずに立ち竦む。

それだけでは終わらない。生き残った最後の目撃者を始末するべく、白い巨人は電波に乗せて新たな命令を下す。
自身に武装が搭載されていないからか、それとも関わった痕跡を残したくないのか――――操られた6型はサイドアーマーから高周波ナイフを取り出して、自らのコクピットへ深々と突き刺す。その過程は説明するほど長いものでもなく、何の躊躇いもない、ドン、という鈍い金属音を伴った一撃だった。
刃渡りの関係上、動力炉に達して爆発することもない、極めて静かな終末――――

* Re: ブラックストライカー 第2話 ( No.2 )
日時: 2011/02/24(木) 01:49:13 メンテ
名前: ぶんろく

「――――――俺、は・・・・・・」

生きていたのは、直前での本能的な判断によるものだった。シートベルトを外し、身をよじらなければ確実に体が両断されていただろう。
レイブは呻きながら、シートの隙間から上体を起こす。

「奴は・・・・・・!?」

衝撃で気を失っていたのか、ナイフを突き付けられた時点から既に十数分が経過していた。
反応がないのを見て、恐らくは仕留めたと勘違いしたのだろう。巨人は既に何処かへと消え去り、
代わりにコクピットハッチの向こうからは救助に駆けつけた隊員達の悲痛な呼びかけと、ハッチをこじ開けるレーザーカッターの、けして好きになれないジリジリという異音が聞こえていた。

簡単な治療と問診の後、基地指令への状況報告の最中――――レイブは茫然自失となった。
あれだけの異常事態に発展しておきながら、映像記録、通信記録、足跡――――白い巨人の存在を証明するものが何一つ現存していなかったからだ。唯一、基地との通信を断絶した広範囲の電波障害は確認されていたが、それだけで機体を特定するには至らない。
大体、同じ部隊の所属でもないマシンが、双方の機体からコントロールを奪うという機能自体が、信じられることがなかった。同士討ちの証拠である機体の骸は存在するのに、だ。レイブとて、出来ることなら悪い夢であったと思いたいぐらい。しかし肉眼で見てしまった以上、もう一縷の希望も抱くことはできなかった。
レイブは途方もない喪失感と、激昂すら越えたドス黒い怒りを得て、静かに息を吐く。

軍に属し、前線に立つ以上は普通の人間より何倍も死に迫る。今日の戦闘で一人や二人は犠牲が出ていた可能性だって否定は出来ない。その結果に対し、私怨を押し殺さなければならないことは承知の上だ。一人や二人に自分が入ることも覚悟している。
しかし、今日の『これ』だけは認められない。認めてはいけない。多くの仲間を失い、やり場のない悲しみと絶望に暮れる面々を一瞥して、意識を介さずに言葉が口から漏れ出る。

「逃がさん、奴だけは・・・・・・・!」

このまま軍に居続ければ、白い巨人にまた会うことがあるのだろうか、と恐ろしく冷ややかな思考が脳内を巡る。
だがそれも数秒、担架を降り、機械の如くあらゆる色を失った顔で、レイブは基地指令に一言告げる。英国陸軍少尉の肩書きを捨てる旨をだ。
待ち続ける必要はない。既に軍人として戦う目的が、生活を除けば、自分の中から一切合切消滅してしまった。レイブは自分の狭い対人関係と、掲げられた正義への無頓着さを少しだけ呪う。
皮肉なことに、全てを失ったこの瞬間にこそ、ずっと空だった心身は満たされていた。

「どこの誰が作った物かは知らないが――――――――探し出して、必ず消す」

恐らくは生まれて初めての、身を焦がすような執念は、それからすぐに一人の少年をレイブの元へ使いに出させた。



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