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* 月下に盾を砂上に剣を 第四章(前編)

日時: 2010/10/31 20:56 メンテ
名前: 越後三沢

こちらではお久しぶりです。
……まったくもってお久しぶりです。ええ。

SS熱もずっと冷めておりませんので、頑張ります。
セルスが萌えトーに顔を出させてもらったりして、うれしい限りです。

第四章、もう1パート続くはずです。
アップはそれから要望します。
 
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* Re: 月下に盾を砂上に剣を 第四章(前編) ( No.1 )
日時: 2010/10/31 20:57 メンテ
名前: 越後三沢

月下に盾を砂上に剣を

第四章

 月光など射すはずもない地底の大空洞は、不思議と暖かな光で満たされていた。
 セルスは辺りを見回すも、それらしき照明器具は存在しない。ただ当たり前のように、光がある。

「本日のプログラむを、起動しマすか?」

 そういえば、目の前の巨体から紡がれる声にも、光と同じ印象を感じる。抑揚の少ない合成音声なのに、相手を落ち着かせるような穏やかな響きがある。

「……セルス?」

 背後に庇ったメディが、おずおずと声をかけてくる。服の裾を引っ張ってくるが、怖がっているのではなく、何か言いたいようだ。

「この機体、いったい……エジプト軍の秘密兵器とか」

「いやいやいや」

 確かに、国外から来たメディがそう思うことに無理はないが、しかしあり得ない。下っ端とはいえ、開発部にも顔を出しているセルスの知らないところで、こんな超兵器が作られているはずはない。
第一、エジプト軍の技術力は、イスラエル産のヴァーチャーを改造してアルヘナを作り、さらにそれを改造してアルメイサムを作るぐらいが限度。新機軸の機体を一から生み出す地力は無い。

「ないない、とにかくそいつはあり得ないから」

 となると、地球人が機動兵器を開発する遥か以前より存在する、オーパーツロボと考えるのが自然だ。単に、アムステラが侵略の為送り込んできた新型兵器と考えることもできるが……

「違うと思う……うん、違うよ、きっと。アムステラの操兵じゃない」

 こちらに関しては、メディにかなり自信がありそうだった。

「そうだな、伝説のカードの伝承はアムステラが攻めてくるずっと前からあるんだし……とと」

 そこまで言って、セルスは顔をしかめた。

「というか、待て。伝説のカードと、この巨大ロボに一体何の関係が……」

 普通に考えれば、関連するはずのない事項だが、二人はここ数日、それが関連する可能性について何度も議論していた。

「……伝説のカードを求めて来た、機動兵器のパイロット……この機体が彼らを呼んでいた?」

「で、そいつらはこのロボに呼びつけられて、会って、でまさか殺られ……」

「それは誤解です」

「「!!??」」

 眼前の巨体が、俄かに二人の会話に割り込んできた。

「話は聞かせていただきマしたが、誤解と偏見に満ち溢れていると言わざるを得マせん」

 丁寧な口調だが、内容は結構乱暴だった。ただし、攻撃的な印象もない。一番近い印象としては、『拗ねている』だろうか。

「確かに、本プログラむを起動させに訪れた方は複数おられマすが、こちらから呼びつけたことはありマせん。また、プログラむシャットダウン時には皆さマお帰りになられマした」

「その、ぷろぐらむってなんですか? それをクリアすれば、伝説のカードが手に入るんですか?」

 興味が出てきたらしいメディが、セルスの横から顔を覗かせながら聞いた。

「本プログラむは、あなた方の資質を測り、また伸ばすためのモのです。クリア時に得られるモのについては……その表現方法が適切かは別として、概ね肯定としておきマしょう」

「テストみたいなもんか? もしくはゲーム?」

「その両方だと思う」

「概ね肯定です」

「メディ、なんか順応してるなぁ」

「そう?」

 プログラムという自分の得意分野が出てきたからか、何だか少し嬉しそうだ。
 機嫌がいいのはいいことだと安心しつつ、セルスは獅子面を見上げた。

「ところで、まだ俺達、あんたが何者か何ロボか聞いてないんだよな」

「私の機能詳細につきマしては、あなた方には知る権利が今のところありマせん」

「いまのところ、ということは、プログラムをクリアすればわかりますか?」

「肯定です。また、プログラむの中でいくつか私の機能を使用するたメ、自ずから判明するとも言えマす」

「完全に謎ロボだなぁ。名前も教えてくれないのか?」

「正式名称につきマしては、現在データベースに登録がありマせん。好きな呼称で呼んでいただいて結構です。参考までに、今マでの履歴を紹介いたしマす。スフィンクス、ホルアクティ、まヘス……」

「それは、今までの挑戦者が付けた名前? 基本、エジプト神話なんだな。確かに、スフィンクスはそれっぽい」

 くいくいっ。
 セルスが納得していると、後ろからメディが携帯端末の画面を見せてきた。
 そこには、すでに数十種類の名前候補が挙がって、うち半分はすでに自分で却下されていた。

「付ける気満々だなぁ」

 確かに、機体に自分で名前を付けるというのはセルスも未経験だった。メディが検索してきたエジプト神話のデータと睨めっこしつつ、二人で悩むほど十分。

「ところで、本日のプログラむを……」

 さらに二十分。

「……スリープもードに移行していいですか」

 心なしか、合成音声のテンションが落ちている。

「待ってくれ、ほぼ決まったんだけど……」

「決マりマしたか」

「うん、お前の名前はアクティオンだ」

「ちがうよ、アクティだよ!」

「どちらですか」

「そこを今揉めてる。なあメディ、アクティオンの方がカッコイイだろ!」

「アクティの方がかわいい」

 少年と少女のロマンが、砂漠の地下で今ぶつかり合っていた。

「巨大ロボに可愛さを求めてどーすんだよ」

「ひどい」

 セルスから離れて、不確定名アクティオンもしくはアクティの足元に近寄るメディ。
 愛おしげに、その表面を撫でる。

「セルスがひどいこと言うよ、アクティ」

「マったく嘆かわしいことです」

「懐柔された!」

 思わぬ展開に、頭を抱えるセルス。結局、名称決定までに、そこから三十分を要することになる。
その名は、『アクティオン。ただし、愛称はアクティ』となった。


※※※
* Re: 月下に盾を砂上に剣を 第四章(前編) ( No.2 )
日時: 2010/10/31 20:58 メンテ
名前: 越後三沢

※※※


「それでは、改めて本日のプログラむを起動しマす」

 アクティオンは、今までに何度繰り返してきたかもうわからない台詞を言った。
 というか、今日に限っても、もう何度繰り返したかわからない。
 記憶媒体のエラーを疑いつつ、プログラムを起動させる。

「プログラむ、カスタまーズモードで起動しました」

「カスタマーズ? カスタマイズとかじゃなくて?」

「……お客さん用のモードってことじゃない?」

「お客さん……ってことはつまり、今からやるのはあくまで体験版ってことか?」

「うん、たぶん。でもそのへんもクリアしないと教えてもらえないんじゃないかな」

 名称を決定するのにえらく揉めていた二人は、打って変わって和やかにアクティオンのプログラムについて考察していた。
 考察が正確かつ自己完結していたため、アクティオンは特に口を挟まなかった。

「それでは、ファーストレッスンです。私が今から出題する問題に答えてください」

「レッスン……? ええと、とりあえずクイズってことだな?」2

 データベースを全検索し、一問目に相応しい問題を選び出す。
 検索には一秒とかからないが、演出上、多少もったいぶってから出題する。

「では問題です。朝は」

 ポニーテールの斜め上に、ぴょこんと手が挙がった。

「人間」

「…………正解です」

「やった!」

 純粋に喜びを見せるメディの前で、アクティオンは肩を震わせる。

「い、今の問題はですね、有名なスフィンクスの……」

「いや、俺地元民だし、メディが完璧に知ってる以上もう解説はいらないよ」

「そ、そうですか……」

 露骨な落胆の動きに、セルスは慌ててメディに駆け寄る。

「……メディ、結構ナイーブだぞアクティのやつ。次はせめて問題を最後まで聞いてやろう。今のだと、朝は四本足、昼は二本足、夜は三本足……」

「どんどんいいよ、アクティ!」

 メディは聞く耳持たず、いつでも挙手できる態勢で、瞳をキラキラ輝かせていた。
 そこまで期待されて、高性能オーパーツAIとしては、問題を出し続けないわけにはいかなかった。

「アまゾ」

「ポロロッカ!」

「……正解です」

「すでにパターンを全部読んだ!?」

 ……わずか二十分後。
ファーストレッスンの結果は、五十問中五十問正解(回答者はすべてメディ)で、あっさりクリアとなった。
 
「……気を取り直してセカンドレッスンです」

「うんまあ、気を取り直してくれ、アクティ」

「友情に感謝しマす、セルス」

 哀愁漂う合成音声の横で、地底空間の光が揺らぐ。どこにも光源が見当たらないのに、スポットライトから放たれたような幾重もの光が、アクティオンと二人の間を照らす。
 
「少し離れてください」

 慌てて後ずさる二人の前の地面に、マス目が浮かび上がる。

「8×8……ってことは……あっ!」

 そして、光が激しく、複雑に絡み合う。
 思わず目を閉じた二人が目を開いて見たのは、マス目に整然とそびえ立つ、白と黒の駒だった。

「立体映像(ホログラム)……これがあなたの機能なの、アクティ?」

「そうです」

「バーチャルなチェスの駒……こいつぁ、リアルだなぁ。本当にホログラム?」

 好奇心を剥きだしに、駒の一つに触れるセルス。

「ん、いや、あるじゃん実体」

「もう少し強く押してミてください」

「こうか? ……と、うおっ!」

 体重をかけて寄りかかると、途端に駒は抵抗を失い、手がすり抜ける。バランス感覚に優れるセルスは特に転びもせず、純粋に驚いた様子で何度も触る。

「へえ……ほらメディ来てみろよ! 軽く触っただけだと、実体があるようにしか思えない」

 とことことメディがやってきて、慎重な手つきで何度か触れる。
 そして、携帯端末に数式を打ち込み始める。

「完璧な質感を再現するホログラム……ってことかな? ほんとにあるものだ、と思ってしまうことで、自分で手を止めてしまうから、すりぬけない……」

「……」

 アクティオンは、態度には出さないものの驚愕していた。『自分でも今は良くわからない』自らの機能を、目の前の少女は迅速に、明解に解き明かしていっているのだから。
 
「さて、セカンドレッスンは見ての通り、チェスの勝負です」

「俺、ルールと駒の動かし方しか知らないんだけど」

「じゅうぶんだよ、教えて。細かいルールまで全部」

「……うん」

 この少女は……。
 アクティオンは、制御できない衝動に襲われ、最初に二人が現れた時に使ったセンサーをもう一度起動させた。
 そう、少年が割り込んだために数値が下方修正されたが、少女に対しては……

「(……該当要素、75%……85%、さらに上昇……!?)」

 それは、アクティオン自身がすでにその意味を忘れてしまった、プログラムの根幹を成すセンサー。それが、メディに強く反応している。あり得ないほどに……

「……アクティ?」

 センサーを向けている当の相手からの不安げな視線に、アクティオンはシステムの制御を取り戻した。

「失礼しマした。それでは、チェス勝負を開始致しマす」

「手加減しないでね」

 元々、この勝負は手加減を前提としたものだった。アクティオンはチェスというゲームを完全に解析しており、実力を半分以下に抑えなければ、人間とそもそも勝負にならないレベルなのだ。
 しかし、今回に限りアクティオンは、いきなり、カスタマーズモードの限界まで戦術レベルを解放した。
 ……そうでなくては勝負にならない。その予感があったからだ。

「ポーンをD4に」

 メディの言葉に合わせて、白い駒が滑らかに動く。
 ……対戦は、停滞時間はほとんどなく、手数のわりに短時間で終わった。
 横から見ていたセルスにはピンと来ていないようだが、それは二人の『格付け』の儀式のようなものだった。

「……チェックメイト」

 メディの、冷静ながら嬉しそうな声が、勝負を締めくくった。

「おメでとうございマす」

 アクティオンの声には、今回は拗ねた響きも悔しげな響きもなかった。
 彼のシステムの中の、休眠していたプログラムが一つ、また一つと再起動を始めていた。


※※※
* Re: 月下に盾を砂上に剣を 第四章(前編) ( No.3 )
日時: 2010/10/31 21:33 メンテ
名前: 春休戦

おぉ、久々に投稿お疲れ様です! 天才少女・メディの面目躍如な回ですねぇ。
そして(命名)アクティオン(アクティ)の反応が良い味だしてるし。(w

さて、アの字(略しすぎ)がどういう目的で『待ち続けていた』のか。その謎が明らかになるのをを楽しみにしてますよ。
* Re: 月下に盾を砂上に剣を 第四章(前編) ( No.4 )
日時: 2010/10/31 22:09 メンテ
名前: ラブサバイブ

>ポロロッカ
海藤!海藤じゃないか!
せっちゃんとメのバカップルっぷりに萌え萌えです。いいぞもっとやれ
* Re: 月下に盾を砂上に剣を 第四章(前編) ( No.5 )
日時: 2010/11/01 13:57 メンテ
名前: カジワラ

意外!名前決めるだけで、ほぼ1時間!!wwww<そーゆう私も、RPGで名前付けるのは数日かける人です。
クイズはきっと最後の方は、問題を言う前に解答を言ったのだろうな。
更に言うなら、軍儀・・じゃなくてチェスはアクティは守るのは嫌いな性質だったのだろうw
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