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* コッペリオン-fragment-後編A

日時: 2010/09/12 01:54 メンテ
名前: BD

うん、いい感じに筆が進みました。

土曜の夜がフリーの日っていいですよね。

それでは外伝SS後編A、開幕です。
 
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* Re: コッペリオン-fragment-後編A ( No.1 )
日時: 2010/09/12 01:55 メンテ
名前: BD

*****

 
 戦艦の窓の外に広がる星屑の世界に見蕩れ、アザレアは、わぁ、と感嘆の声を漏らす。

実に2年半の歳月を暗き地下室にて過ごした彼女である。眼前に映る景色全てが新鮮な喜びに満ちていた。


「星の海…すっごく綺麗だね。まるで宝石箱の中を覗き込んだみたい」

 誰もいない空間に向かってそう呟く。 

否、彼女には"視え"ている。

傍らに像を結ぶは、穏やかな顔をした初老の男。

血の繋がらぬ最愛の祖父。

セリム=クラドヴェリーの姿。


「…ん? なぁに?おじいちゃん。

『お前は今、幸せか?』って?

ヴァネッサはとっても優しいんだ。昨日もすごく甘くて美味しいケーキを食べさせてくれたし。

チャカは乱暴者だけど、私の友達になってくれたし。あれで結構可愛いところあるんだよ。

白衣着たおじさん達も、私をぶったり蹴ったりしないから好き。

検査は頭に変な機械取り付けたり、裸になったりしなきゃいけないから、ちょっと苦手だけど。

ここの人たちは皆、私に優しいし。気持ち悪がったりしないんだ。だから、大好き。

だから、私は幸せだよ、おじいちゃん」


 うふふ、と笑いながら、屈託の無い笑顔で、彼女は呟いた。

何も無い空間に向かって。

他の者がどんなに眼を凝らしても、そこには『何も無い』

だが、確かに『存在する』

生命の存在の定義を覆す、何かが。

* Re: コッペリオン-fragment-後編A ( No.2 )
日時: 2010/09/12 01:55 メンテ
名前: BD

*****



「宇宙(そら)の旅にはもう慣れましたか? カーストン博士」


 未だ幼さの残る青年、否、少年と呼んで良い歳の項だろうか。

前髪を長く伸ばした中肉中背の少年が、眉間に皺を寄せながら問い掛ける。

彼が身に纏っているのは、白を基調とした軍服とワーグナー家の徽章。

それは、中隊指揮官を示す証でもあった。


「あら、苗字で呼ぶなんて水臭いじゃないの。あと敬語もやめて。

さっきもそう言ったでしょ? ねえ、ヴィリバルド坊ちゃま」


 ヴァネッサ=カーストンが、手中のグラスの中のロックアイスをカラカラと弄びながら、可笑しそうに笑う。


「し、しかし、貴女は我がワーグナー艦隊に招かれた技術左官。

私よりも階級が上です。そのような方に無礼な口など…」


「やーねぇ、もう。真面目なんだから。

私が良いって言ってるんだから、良いのよ。ヴァネッサって呼んで。あともっとフレンドリーに。

上官命令よ、坊ちゃま。

大体、アナタはここの一番偉い人の御曹司でしょうが。上官も何も関係なく」


「わ、解りました。ヴァネッサ…博士。

出来るだけ善処しま…善処する」


 命じられた通りに、敬語を止める努力を始める少年を見ながら、ヴァネッサはまた可笑しそうに笑い、少年に艶っぽい視線を送った。

長い船旅だ。話し相手、からかう相手が欲しかった。しかしワーグナー艦隊のスタッフは中年と亜人ばかり。

そこで目についたのが、この少年。ワイアルド=ワーグナーの実子、ヴィリバルド=ワーグナー。

彼女好みの美少年。しかも、如何にも女慣れしていない仕草が母性本能を擽る。


やっぱり男は童貞が最高よねえ。ただしイケメンに限るけど、等と、心の中で一人ごちる。



*****



 このヴィリバルドと言う少年、優男然として見かけに反して、優秀な指揮官の卵であり、準エース級の操兵パイロットであった。

あのワーグナーが、自分の息子だからという理由だけで、年端もいかぬひよっ子を重要なポストに置くはずが無い。

完全実力主義。唯才登用。

力があればどのような素性・出身の者、人格破綻者でも重用し、無能ならばどのように高貴な血筋の者だろうと切って捨てる。

それが白髪鬼ワーグナーの掲げる絶対のルールであった。


 元"ニルヴァナ機関"長官ヴァネッサ=カーストン、及び十数体の強化人間(成功型も簡易型も含めての数ではあるが)が軍属上、ワーグナーの指揮下に入ってちょうど一ヶ月が経過していた。

ワイアルド=ワーグナーは強化人間部隊の極めて高い有用性をいち早く評価し、この短期間で自軍への戦力として編入を果たした。

勿論、彼女の所属していた大元の組織である、バロネス教育機構の全面的サポートがあったことは言うに及ばず。

中隊規模とは言え、一個大隊にも匹敵しうる戦力を、彼は実質一晩で手に入れたのである。


 この部隊の特徴は、その特異な編成法にある。

強化人間1体をサポートし、付き従う3名の精鋭兵。1:3の四人小隊(フォーマンセル)。

例えば強力な戦力でありながら、精神的に不安定であったり、命令系統を乱す恐れのある固体が、戦場を知り尽くした3名のベテラン兵士の助力を常に得ながら運用される。

監視と護衛を同時に行いつつ、強化兵各々の持ち味・能力を殺す事無く発揮する事を目的として。

このユニットがいくつかの編隊を組んで陣形を為す。


 この部隊は考案者のワーグナーによって、"Cerberus"(サーベラス)と名付けられた。

地獄の番犬、悪夢の三頭獣の名にあやかって。

そして強化人間混成部隊サーベラスを統率する部隊長に抜擢されたのが、弱冠17歳にしてワイアルド=ワーグナーの正統な後継者と目される、ヴィリバルドであった。
* Re: コッペリオン-fragment-後編A ( No.3 )
日時: 2010/09/12 01:56 メンテ
名前: BD

 ワーグナーは、彼を隊長に任命すると同時に、一つの命令を下した。


「サーベラスの牙を砥げ」

 即ち、結成されて間もない部隊を率いて、経験を積ませよ。

…直ちに大規模な戦闘行為を行え、と。言う事だ。

そして、この男がそう指示を出した以上、敵性勢力を完膚なきまでに叩き潰せ、と言われたのと同義であった。

そこにはこの若き指揮官の器を計り、彼自身にも経験を積ませるという目的も含まれていたのだが。


 そう言った経緯があり、現在この艦は外宇宙へと向かって航路をとっている。

向かうはアムステラの支配の及ばぬ未開の地。

そこはあらゆる敵性勢力が犇く、魑魅魍魎の無法地帯。


 ヴィリバルドにとって、指揮官としての、謂わば初陣とも言うべき遠征である。

課せられた責任の重さを感じ、出立前に綿密な計画を立てようと、様々な資料を読み耽る彼の執務室を、無遠慮にノックする者がいた。


「ヴィリバルド坊ちゃま。少しお時間宜しいかしら?」


 それはつい先日、ワーグナー艦隊の特別技術仕官として招かれた女博士。

「どうぞ」と促し、部屋の中に招き入れる。

このような夜更けに、一体何の用か?と尋ねてみた。


「此度の遠征について。一つ、提案があるのだけれど。

ねえアナタ、"モルディバ"という惑星をご存知かしら? 

ああ、失礼。私なんかよりずっと知ってるわよねえ、生まれも育ちもこちらの宙域のアナタなら。

そこを、遠征の目的地にする、っていうのは如何かしら?」


 モルディバ…確か、ここからワープ航法を交えて15光年程、太陽を背にして進んだ先にある星だ。

確か、地表のほとんどを原生林に覆われた未開の地だったと記憶している。

しかし、周りにはこれと言った文明を持った惑星も無く、戦略上の価値があるわけでもなければ、鉱物資源が豊富なわけでもない、謂わば"外れ"の星。

万が一、食物資源が不足した時のために確保すべきか否かと言うのが論じられる程度の、重要度の低い惑星だったはず。

危険な敵性生命体も多く目撃されたという情報もあり、その宙域に敢えて近づく事はしなかった。

…何故、どのような地を、本星出身のこの女性が名指しで選択しようとするのか?

このヴァネッサという女の意図が解らない。


「いえね、別に物見遊山気分で言っているんじゃないのよ。

あの辺って、ホラ、穴場みたいな所でしょ? 岩礁も多いし。

つまり、身を隠すには最適、って訳。

………ねえ、最近この近辺に良く出没している何とかって海賊団、一体どこを根城にしてるのかしらねえ?」


「それは…確かに可能性も無くは無いですが…憶測でしょう?

確証の得られない情報に踊らされて、徒に皆を危険に晒す訳には行きませんよ」


 そう主張するヴィリバルドの言葉をからかうように、女は笑いながら答える。


「あらあら良い子ね。マニュアル通りのお答えですわ、坊ちゃま。

よーくお勉強してらっしゃる。

そう、普通に考えたらそうよね。うん。"危険"だわ。

…でもね、アナタのお父様ならどう考えるかしら?

狼の牙を研ぐ為に飼いならされた家畜を襲わせるのと、巨大な野生の猪を追わせるのはどっちがお好みかしらねえ?」


 …そうだ。もしも我が父、ワイアルド=ワーグナーならば。

迷うまでも無く後者を選び取るだろう。

綿密なシミュレーションを立て、部下達の安全を第一に…そんな事を考えていた自分を恥じ、怒鳴りつけたくなる。


 自分がワーグナーの名を継ぐに相応しい男になるためには。

あらゆる定石を一旦かなぐり捨てなければならないのかもしれない。


「ああ…貴女のおっしゃる事は理に適っている。

あの忌々しい"バステット"の盗賊集団のあの神出鬼没さ…或いはあの宙域で身を隠していると考えれば、辻褄の合うケースも多い。

そうですね、此度の遠征、惑星モルディバを目的地として航程を組ませて頂きます」


「ありがとう、坊ちゃま。ああ、嬉しい。

こんな素人の意見を真剣に聞いて下さるなんて。

アナタとは末永く仲良くしたいわぁ…」


 どこか艶のある声で、熱の篭った視線を浴びせられ、ヴィリバルドは落ち着き無く目を逸らす。


「い、いえ…私も経験の無い若輩者ですので…

こちらこそ今後もご指導ご鞭撻の程を。カーストン博士」


 毒婦に魅入られた少年。

今の彼がそう形容するに相応しいという事に、自分から気付く事は無さそうだった。
* Re: コッペリオン-fragment-後編A ( No.4 )
日時: 2010/09/12 01:56 メンテ
名前: BD

*****



「実はねぇ、ヴィリバルド。

モルディバに行きたい、って言い出したのはアザレアのお譲ちゃんなのよ。

今だから言うけどねぇ。

何だか最もらしい理由を付けて提言しちゃってごめんなさいね。」


 ブランデーを咽喉の奥に流し込み、程よく朱に染まった頬でヴァネッサが騙りかけてくる。

それを聞いて口に含んだコーヒーを思わず噴出してしまいそうになる。


「はぁ…! あの娘が? 一体何の理由があって?」


「さあ? 私にも解らないわ。

というか、あの娘の言葉は半分も理解できれば上出来かもね。

だって、私にはあの娘と同じ景色を見ることは決して出来ないのだもの。

『モルディバで自分を待っている人がいる』だったかしら?

行った事も無い惑星で、誰が待っているっていうのかしら? やっぱり変わった娘よねえ。」


 他人事の様に呟くヴァネッサに呆れてしまう。

そんな夢物語の様な話を真に受けて、攻め込む提案をしたこの女も大概だ、と感じるのは必然。

しかし幸か不幸か、アムステラ領の宙域を荒らす、討伐対象のバステット星人どもの根城が、この近くにある可能性が高い事は、遠征が始まってからの調査によって確定にも近い事が判明した。

痕跡を辿れば一目瞭然な程に。

嘘から出た真。だが、お陰で目的を果たす為のプロセスは、全く問題もなく順調であるとも言えよう。

出立の動機がおかしいという事を除いては、怖い位に順調だ。

やはり、常識に囚われているうちは一皮剥ける事が出来ないのかもしれない。


 ふと、ヴィリバルドは普段から抱いている疑問を、目の前の女に訊いてみたい衝動に駆られた。


「アザレア…あの娘は一体何です? 博士。

強化人間兵士達のデータは穴が開くほどに見させてもらった。

どれも逸脱した能力を持った兵士たちだ。


あの"チャカ"などは、この目で確認するまでは俄かには信じることすら出来ない身体能力を持っていた。

しかし、アザレア…あの娘は異質だ。


何一つ…何一つ、"秀でているものが無い"。


筋力・瞬発力・持久力…身体能力は全て、同年代の女子にすら劣る。

操兵に必要な技能である瞬発力・精神力すら備えていない。

あれで強化人間と言えるものなのか?」



「あら、バストサイズは結構あるわよ? あの歳の女の子にしては。

そんな、他の子と比べて劣ってるなんて言ったら失礼よ。お人形さんみたいで可愛い顔してるし」


「茶化さないでもらいたい。

………私が異質だと言ったのはもう一つ。

"あの力"は何なんだ?」



 そう、本当に訊きたかったのはその事だ。

………死者の魂をみる力。

本当に…そんな事が出来るものなのか?

そもそも、霊魂などと言うものが本当に存在するのか?

彼女が見ている世界が唯の妄想である、と言う可能性は?

本物であると証明する術は無い。



 ヴィリバルドは、初めてアザレアと名乗る被検体と言葉を交わした時の事を思い出す。


『こんにちは。ヴィリバルド…かっこいい名前だね』


 こちらが名乗る前に、彼女はこちらの名前を知っていた。

それ自体は特に気にするような事ではない。他の誰かから聞いたのだろうと、そう思っていた。

だがアザレアはこう言った。


『あ、ごめんなさい。…後ろにいる女の人から聞いたの。相手が名乗る前に言っちゃダメって、あれほどおじいちゃんにも注意されたのに。

気を悪くしないでね。

…えっ? その女の人はどんな人かって? 黒髪のストレートで…すごく綺麗な人。眼の色は…』


 そう、合致している。合致しすぎているのだ。

最早この世に存在しないはずの、彼の母親の特徴に。


 …それも、この基地内の誰かに聞いたのだろう? そう思えば何の矛盾もなく説明できるのかも知れない。

だが、その推理を主張するには一つの疑問を解決しなければならない。


『精神の病を煩い、自らの息子、即ちヴィリバルドと無理心中を図ろうとした母親。

だが…結局は息子のみが一命を取り留めた。

この事実は長きに渡ってこの基地内では禁句(タブー)とされていた。

周囲の人間が母の話を少しでもしようものなら、例外無く父の怒りに触れ、舌を抜かれて宇宙空間に放り出された。

一体誰が、そんな危険を冒してまで、何の関わりも無い研究対象の娘に、そんな情報を伝えるのだろうか?』



 背筋が凍るような思いをしたのを覚えている。

首に残った痣が疼く。


『ヴィリバルド…私の可愛いヴィリバルド…一緒に、行きましょう?』


母の両手が自分の首筋に伸び…

自分も、この人と未来永劫一緒にいられるならば、と受け入れた。

でも母様は、私を置いて行ってしまった。

本当は今でも………そこに居るの? 母様。
* Re: コッペリオン-fragment-後編A ( No.5 )
日時: 2010/09/12 01:57 メンテ
名前: BD

「"あの力"ねえ…

その言い方だと、アナタはアレをオカルトの類だと思っているのかしら?」


 ふと、ヴァネッサの声を聞き、ヴィリバルドは我に返る。


「………いいえ、思っていない。

というよりも、私は懐疑的なんですよ。そういう能力を持った人間が存在するという事には」



「ねえ、ヴィリバルド。今から概念的なお話をするわ。

"霊"とは一体、何を指すものだと思う?」


 ヴィリバルドは無神論者であった。

故に、即答でこう答える。


「私は信じていない。霊魂が存在するという事を。

生物は例外なく、死ねば唯の肉の塊となる。

…それでも敢えて定義するとするならば、霊とは生前の肉体に、脳に残っていた記憶の事でしょうか?」


 ヴァネッサが口元を嬉しそうに歪ませる。


「いーい線行ってるわぁ。賢い子は好きよ。

"記憶"…大脳辺縁系の海馬に蓄積された情報。書き込まれた電気信号の記録と言い換えてみましょうか。

この情報のパターンがね、脳が死滅した後も、滅びる事無く微弱な電気信号と共にその場、或いは物に付着する…こう仮定する事から始めるのよ。

"サイコメトリー" そう呼ぶ事もあるわね。他者の記憶を読み取る。

この極めて弱い、今にも消えてしまいそうな電気信号に対して、器質的に感受性を持つ脳を持っている者。これが大前提。

つまり、電気信号を伝える媒体さえ残っていれば、既に死んでしまった人間の記憶を、自分の脳内で映画の様に再生する事が出来る。

………あの娘、アザレアは、そういう特異体質の持ち主なのよ」



「有り得ない。そんな夢物語のような…」



「有り得ない、なんて言葉を簡単に使うものじゃないわよ。

その先に進化は、無いのだから。

大昔の人は、人間が空を飛ぶなんて有り得ない、と思っていたのでしょうね。

でも実際は、人類はその世界をはるか空の上、宇宙空間に届くまで広げた。

それは有り得ない、と断ずることをしなかった人間がいたからよ。

極論だけどね」


 常識は、かなぐり捨てなければならないのだ。

凝り固まった固定概念は放り出さなければならない。

その先の進化を求むるならば。



「アザレアはそういう素養を小さい頃から持っていたようだけれども。

完全に開花したのは、2年半に渡る監禁生活を経た時からね。

彼女はずっと、話し相手を求め続けた。死者の魂…生命の記憶の充満する閉鎖空間で。


それこそ、砂漠に落とした米粒を一つ、拾い上げるような不確かな作業を、延々と続けてきたのよ。

だからこそ、鮮明に微弱な電気信号を感じ取る事が出来る。

…実はね、ヴィリバルド。

私はあの子に、"強化"なんて施していないのよ。

行ったのは"調整"だけ。

下手にいじくり回して、あの才能を失ってのが怖かったから。

だから、アナタの感じた疑問は最もな事」



 化物。

そう形容するにはあの娘の容姿は可憐過ぎる。

だが、これを例えるに、他に相応しい言葉が見つかるだろうか?


「彼女は最弱の兵士。でも、至高の存在になれる可能性を秘めている」


「…言っている事は理解はできる。でも、賛同は出来ない。

狐につままれたような気分だ。

でも、仮にそれが真実だったとして、一体どうやって戦闘に役立てると言うんですか?」


 死者の言葉を聞く。

確かに稀有な能力だろう。

だが、存在しない者の声を聞いたところで、現実にどのような影響を及ぼせると言うのか?


 ヴァネッサの眼が爛々と輝いている。

研究の事について説明する事はやはり、研究者として至上の喜びなのだ。
 

「それについてはね、既にいくつかの運用法を…」


 
 その瞬間。

爆音と共に艦体が大きく揺れた。



続いて間髪入れずに鳴り響くアラート。

"第一種戦闘配置"を伝えるアナウンス。


「!! 敵襲か…すぐにブリッジに向かう」


「そのようね。この続きはいずれまた」


 ヴァネッサの声を背中に聞きつつ、ヴィリバルドは艦橋へと走り出す。
* Re: コッペリオン-fragment-後編A ( No.6 )
日時: 2010/09/12 01:57 メンテ
名前: BD

*****
 


「状況は?」

艦橋に入るなり、オペレーターに状況を確認するヴィリバルド。


「はい、岩礁の影から砲撃を受けました。モニターに画像出ます」


 獣の形を模した戦闘兵器がこちらにライフルの銃口を向けている。

大規模な奇襲作戦。そして迅速な離脱。


この手口、そしてあの機体、何度か目にした事がある。



「"バステット"…忌々しい海賊どもめ。こちらの進軍に気付いたか」


 抜け目の無い連中だ、と心からそう思う。

そうでなければ、この様に長い期間、ワーグナー艦隊の目を盗んで略奪行為など行えはしない。


「だが、予定より早く目的を完遂できそうだな。

奴らを一網打尽にする!

羅甲を出せ。私自ら陣頭指揮を執る!

そして"サーベラス"を投入。出し惜しみするな。一気に決着を付けるぞ」


 戦闘前の血の沸き立つ感覚は、彼の身体に"白髪鬼"ワーグナーの血が色濃く流れている証左。

湧き上がる武者震いを抑えることは適わず。



*****



「戦争…始まっちゃった…」


 怖い。

アザレアは初めての実戦への恐怖に身体を震わせた。

できれば戦いたくは無い。

彼女は異能ではあるが異質。

肉体的に何一つ、秀でている能力など無い。



「バーカ。なぁにビビってんだよタコ。

どーせてめぇになんか誰も期待してねーし」


 後ろから乱暴な声を投げつけられる。

少年は屈託の無い笑顔でこちらの後頭部を軽く叩く。


「チャカ…私…」


「すっこんでろよアザレアぁ!

てめぇは何にもする必要はねぇ。全部俺の独壇場だぁ!!

隅っこで膝を抱えて震えてな!!!」


 "七罪"のチャカはそう言い放ち、獣のように尖った犬歯を見せて笑う。

この少年に、恐怖の感情は無い。

あるのは戦場へ向かう狂喜と歓喜。


震える要素は、何一つ無い。



*****
* Re: コッペリオン-fragment-後編A ( No.7 )
日時: 2010/09/12 02:13 メンテ
名前: BD

今回はここまで。

あ、ツッコミ入る前に言っときますと。

大脳辺縁系の海馬にどうのこうのってとこ、ゆで生物学だからね! 真剣に考察されても困るからね!

有り得ないとか簡単に言っちゃいけないのです。
* Re: コッペリオン-fragment-後編A ( No.8 )
日時: 2010/09/12 09:50 メンテ
名前: 春休戦

ゆで理論だろうが何だろうが、説明が付けば良かろうなのだあぁぁ〜!(笑)
はい、というわけでフラグ後2(なんつぅ略だ)執筆お疲れ様です。

つくづく、キャラ立ちが良いなぁ〜。ここまで新キャラが続々投入(&退場(w)してるのに
以前から知ってた様な錯覚すら覚えますよ。

この辺は弓を引き絞る様な起・承の段階。続く転の段階で放たれる力を期待してます。(^^)
* Re: コッペリオン-fragment-後編A ( No.9 )
日時: 2010/09/12 13:53 メンテ
名前: fan

おー戦い始まるー! アザレアの戦闘スタイルはまだ謎なんですね。
少壮指揮官ヴィリバルドとチャカがどのような戦いぶり見せるかに期待です。
そしてモルディバで何が待ってるか、楽しみにしてまーす(圧力じゃないよ)
* Re: コッペリオン-fragment-後編A ( No.10 )
日時: 2010/09/12 19:29 メンテ
名前: BD

<春休戦さん

感想ありがとうございます
新キャラの利点は、やはり「好きに扱ってOK」って事に限りますねえ。既存キャラだと、下手に負けさせたり死亡させたり出来ないですから。
おっしゃるとおり、ここでちょうど起承転結の承の部分が終了。転たる次回もなるべく早く書き上げますー

<ふぁんさん
感想どうもですー
戦闘シーンは書いててテンション上がるので、いつもより筆が進むかも。アザレアもチャカもヴィリバルドももれなく活躍させるつもりですのでー

余りプレッシャーはかけずにお待ちください!
* Re: コッペリオン-fragment-後編A ( No.11 )
日時: 2010/09/13 19:48 メンテ
名前: カジワラ

ヴァネッサさんの童貞扱いっぷりにハァハァ<それはチャットでも伝えてます。

絶対ヴィリバルド君はヤラせて貰えないね!
キスまではOKまでかもしれないけど、舌までは入れてくれないとか、ヘソまでは弄ってくれるけど、胸とか股間は弄ってあげないみたいな(ぉぃ

あと地味にアザレアの検査で裸になるのは苦手って言うのは、やっぱり何も付けてない状態なのかなって考えたり・・・・。

い・いや、違うんです!違うんですよ!!この後のバステット星人戦闘だって楽しみだし、モルディバに何があるかも楽しみにしてるんです!!
ただ、そのやっぱ、男性心理的に、ヴァネッサさんと、検査は突っ込まざるを得ないというかなんというk・・・:y=-( ゜д゜)・∵;; ターン

と言う訳で、次回も楽しみにしてます〜♪


P・S

大蛇毒砲の設定で、ちょっと確認とりたい事あるんで、メール確認お願いしますねぃ〜♪
* Re: コッペリオン-fragment-後編A ( No.12 )
日時: 2010/09/13 23:42 メンテ
名前: BD

<カジワラさん

感想どうもですー
カジワラさんのそのリアクションがみたくて、ヴァネッサに意味深な台詞を言わせたり言わせなかったりですね(ニヤリ
検査つったら裸ですよ。プルプルプルと叫びながら全裸の幼女が走り回るのが正しい形であって、スパッツ姿のおでこちゃんがランニングマシンの上を走るのは邪道(強化人間話)

メール拝見しました。チャットでもお答えしましたが、毒砲ちゃんに関してはカジワラさんのお好きなようにお使いいただいて結構ですゆえに。
SS完成楽しみにしてます。
それではー

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