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* コッペリオン-fragment-後編@

日時: 2010/08/20 20:27 メンテ
名前: BD

前回のUPから数えてちょうど半年ぶりのSS更新。

多忙のため、中々執筆の時間がとれずにいますが、私も皆さんの形式を習って、区切りのいいところまで書いてUPという形をとってみました。このくらいの長さなら開いている時間を見て書けるかなあ。

モチベーションを保つ為にも小出しにして書いていこうと思っています。

それではどうぞ。
 
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* Re: コッペリオン-fragment-後編@ ( No.1 )
日時: 2010/08/20 20:25 メンテ
名前: BD

 アムステラ本星から数十光年を数えた宙域に、"白髪鬼""常勝将軍" と謳われる猛将がいる。

当代、並ぶものなき英雄と音に聞こえし、ワイアルド=ワーグナー辺境伯その人である。


 アムステラ神聖帝国の武闘派の重鎮にして、他惑星侵攻軍の筆頭の一人に数えられる男。

その鋭き眼光は齢60を過ぎても尚、衰えを見せず。

その進軍は燃え盛る炎の広がるが如く。


 人々はこう噂した。

「ワーグナー艦隊の進む先に敵は無し。

アムステラの版図を示す地図は彼らの進軍によって塗り替えられ、

"外宇宙"の概念は時間と共に後退していく」と。


 初めて戦上に出てより45年。

征服した星々は枚挙に暇なく。

最も恐るるべきは、戦略的な観点で見ればこの男の戦歴に、唯一つの敗北も無い、という事である。
* Re: コッペリオン-fragment-後編@ ( No.2 )
日時: 2010/08/20 20:25 メンテ
名前: BD

*****




「お初にお眼にかかります。

お会いできて光栄ですわ、ワーグナー提督」


 謁見の間にて。

生きる伝説を前に、"ニルヴァナ機関"総責任者・ヴァネッサ=カーストンは満面の笑顔を浮かべつつ跪き、一礼する。


 さながら玉座を模したが如き椅子の上、ワイアルド=ワーグナーは頬杖を付いたまま、鋭い視線をヴァネッサに向けた。


「ふむ。ヴァネッサ…と申したか。

畏まらずとも良い。楽にするが良い。

オスカー=フォン=ベルンシュテルン将軍よりの紹介状を見せてもらった。

優秀な技術者であるそうだな? 遠き地より良くぞ参った」


 ワーグナーの威厳あふれる声を聞きつつ、ヴァネッサは周囲を抜け目無く見渡す。

このような辺境の地にあって、豪華絢爛たる宮殿の如き建築物。

出迎えに来た兵士達の数。兵器の量。

どれも、一個大隊の持つものとは思えない。


 そもそも、ワーグナーは何故、これまでの多大な功績にも関わらず、このような辺境の最前線の地の司令官に甘んじているのか。

彼にはかつて、若き頃、聖帝への謀反を企てた疑いで、一時拘留された経験があった。

それが果たして、本当に溢れ出る野心を抑えきれずに行った暴挙であったのか。

或いは、彼の政敵により陥れられ、濡れ衣を着せられた結果であったのか。

その真偽を確かめるには、手持ちの情報が少なすぎる。

だが、中央から警戒され、呈の良い左遷の如く最前線に置かれているのは紛れも無い事実。

そして外様でありながら、その名声を遥か離れた本星へ轟かせているのもまた、事実。
* Re: コッペリオン-fragment-後編@ ( No.3 )
日時: 2010/08/20 20:29 メンテ
名前: BD

 ふと、奥から、侍従と思しき者達が、歓待の飲み物を運んでくる。

一人は鳥の様な嘴を持った男、もう一人は魚の如き異形をした女であった。


 『獣人種』と人くくりに称される、異星人達。

恐らくは征服した惑星の生き残りたちであろう。

良く見れば、兵士たちの中にも、所謂『人類』とは思えぬ姿形をした者たちが混ざっているのが見て取れる。


 『獣人種』はかつて、被差別の対象であった。

人は『自らと違う者』、マイノリティを遠ざけ、自分たちのコミュニティ秩序を保とうと欲す。

否、それはアムステラ開闢以来幾年月を重ねた今でも、根強く残る文化である。

雑多なる人種のるつぼ、惑星『センゴク』との同盟、及び"剣帝"ミカヅキの将軍職抜擢を受け、現在では若い民衆の間でそういった差別は次第に無くなりつつはあるが。

何百年、何千年に渡り、刷り込まれてきた意識はそう易々と変えることは出来ない。


故に、アムステラ本星では獣人たちが社会的地位に付く事は極めて稀なのだ。
 


「良かろう。ヴァネッサ=カーストン女史を、本日を持って我がワーグナー艦隊の技術開発顧問として正式に招き入れよう」



「ありがとうございます。光栄の極みですわ」


 ヴァネッサは張り付いた笑顔を崩さずに、再度、敬礼してみせる。


「わしはな、博士。才ある者を愛しておる。

故に、お前が何者で、何の目的でわしに近づいたのか、どういった氏素性の者なのかは問わぬ。

問うのは実力のみだ」


「心得ております」


 それは、大量の異形の者たちを側近に置いている時点で把握できた。


『唯才登用』


力さえあれば、用いる。

当然その逆も…


「この先、常にわしに結果を示し続けろ。

それが出来なくば、即刻立ち去ってもらうぞ、ヴァネッサ博士。

わしが最も忌み嫌うのは無能なる者だ」


 ヴァネッサは深く深く、頭を下げ………そして、可笑しそうに口の端を歪めて、にやりと微笑む。


この男、思ったとおりの人物だ。

この言葉、裏を返せば『結果さえ』出せば、どのような内容の研究でも自由にやらせてくれる、と言う事だ。

それが例えば、人道に反するようなものだとしても…


最っ高じゃないの…、と小声で呟く。

* Re: コッペリオン-fragment-後編@ ( No.4 )
日時: 2010/08/20 20:26 メンテ
名前: BD

「肝に銘じておきますわね。

さし当たって、提督への手土産として持参したものがあるのですが…」



「ほう、何かな?」

 
 ヴァネッサがパチン、と指を弾く。

同時に、立体映像が小型映写機から照射され、像を結ぶ。


そこに映っているのは………

夥しい数の屍、屍、屍の山。


積み上げられた死体の上に、無造作に腰掛け、カメラを睨みつける小柄な少年。

返り血に塗れたその少年の名は…


「"七罪"のチャカ。

私の一番可愛がっている『息子』ですわ。

聞けば、提督にもご子息がおられるそうで。

もう、可愛くて可愛くて、ついついホームビデオとか、撮ってしまいたくなる気持ち、お分かり頂けますよね?」


 立ち上がり、慇懃無礼にそう言い放つ。


ワーグナーの目の色が変わる。

それもそのはず。


 少年が積み上げた、死体が着ているのは…『ワーグナー艦隊の徽章の入ったアムステラ軍服』

即ち、無残に殺害されたのは彼の部下たち…


「先ほど、門番の方達に見咎められましてねえ。

ちゃんと紹介状も許可証もあるって言うのに、念の為に身体検査させろ、なーんて言うんですよ。

嫌ぁーねぇ、全く。

お相手してると、提督との面会時間に間に合わなさそうだったので、彼に代わりに『接待』してもらったって訳です。

………構いませんよね、こんな『無能』な連中の10人や20人」


 立体映像を凝視しているワーグナーの握り締めた拳が、小刻みに震えている。


 あら、これはちょっと失敗しちゃったかしら? と心の中で一人ごちる。

まあ、これで未だ誰の息もかかっていない実力者に取り入って、研究を進めようという計画がご破算になるなら仕方が無い。

これで激昂するならその程度の人物だった、と言う事。他に利用価値のある大物は何人もいる…


 これは、手っ取り早く自分の"作品"を売り込む演出だ。

面会前に血祭りにあげた不埒な門番及び、駆けつけた兵士たちを秘密裏に殺害し、それをカメラに収め放映しただけ。

その後、間髪入れずに面会へと到る。

念のため、伝令役の兵士まで殺したのだ。この非常事態がワーグナーに報告されるには今しばし時間がかかるだろう。


 そして護衛の為に連れてきたチャカは、既にこの謁見の間のどこかに潜ませている。

一騎当千の戦力。"強化人間"。

彼らと共にいる限り、彼女の安全はいつでも確保されるのだ。

そして、彼女たちの後始末は、バロネス機構のお偉いさん方がやってくれるだろう。
* Re: コッペリオン-fragment-後編@ ( No.5 )
日時: 2010/08/20 20:27 メンテ
名前: BD

 だが、傑物たるワイアルド=ワーグナーは、その凄惨な場面を見つつ、こう言い放った。


「 素 晴 ら し い … 」


 これにはヴァネッサも予想外の表情を隠せない。

自分の部下を殺されて、この反応…


「成る程な。これが"強化人間"か。

噂には聞いておったが、これ程までに凄まじい力を持っておるか。

ふふふ…お主を雇い入れる、という事は、当然、この小僧とそれに匹敵する兵士を我が軍に提供する、という事であろうな?」


 ワーグナーは興奮に打ち震える。

ヴァネッサはその狂気の表情に、戦慄を覚えた。


「これなら無能者の命を100人失ってもお釣りが来るわ。

良い良い。貴様らの無礼は不問に処す。

その代わりに、必ず完成させい。

『究極の兵士』を。

あの宰相の傍女どもにも負けぬ、『人を超えた存在』を。

研究の為の資金は惜しまぬ。欲しい設備があれば遠慮なく申すが良い。

お主の『才』、遠慮なく我が物とさせてもらうぞ、ヴァネッサ=カーストン」


 高笑いを上げながら椅子から立ち上がり、堂々たる足取りで謁見室を後にする"白髪鬼"ワーグナー。

………冷や汗をかかされたのは、何年ぶりのことであろうか?

しばし立ち尽くしていたヴァネッサは、吐き捨てる様に呟いた。


「全く…最っっっ高ね、おじいちゃん。

踏み台にして、価値が無くなったら後はポイッ、って考えてたのに、そうもいかなさそうじゃないの。

まあ、いいわ。毒を喰らわば皿まで。

その才気、私の目的の為に精々利用させてもらうわよ」


 二つの狂気が充満する。

この会見は最凶たる軍勢が産声を上げる序曲に過ぎない。
* Re: コッペリオン-fragment-後編@ ( No.6 )
日時: 2010/08/20 20:37 メンテ
名前: BD

今回はここまでで一区切り。

なんかアレですね、新聞の連載小説みたいな長さ。
ペース配分的には1〜2時間あれば十分な感じなので、筆が乗っているうちに引き続き執筆を進めたいと思います。
* Re: コッペリオン-fragment-後編@ ( No.7 )
日時: 2010/08/21 22:59 メンテ
名前: フィール

BDさんお疲れ様です。
ってかおじいちゃん怖えーー!!!!!
この人完全にあっち側いってる!

でもこういうヤバイ人とヤバイ人が出会うイベントっていいですよね。
私もこういう凄みのあるキャラを書きたいものです。
* Re: コッペリオン-fragment-後編@ ( No.8 )
日時: 2010/08/29 18:01 メンテ
名前: BD

フィールさん<

感想ありがとうございます。
気付くのが遅れて申し訳ありません><

あっち側の住人を描写するのは楽しいのですよ。
あと、おじいちゃん大好きおじいちゃん。

クセ者同士の会話は、シリアスなシーンよりも容易に浮かんできて楽しくなってきますが、決して私自身がそういうおかしなタイプであるわけではありません。
ありませんよハイ。
* Re: コッペリオン-fragment-後編@ ( No.9 )
日時: 2010/09/10 14:56 メンテ
名前: カジワラ

こいつは!こいつは!!こいつは、すげぇぇぇぇぇええええええええええええ!!!!
恐るべしはワーグナー!老いても尚盛んは、テッシンのみの言葉ならずにして、ワイアルド=ワーグナー辺境伯その人にも冠する事その事実ゥー!!

いやぁ、全般的に化かし合いかつ、規律違反も甚だしい行動でありながら、それどれもがキャラを引き立たせ、それを一手に受け止めるワーグナーが超パネェぜ!!
うーん、いずれはベロニカ達と激突する日が来るのだろーけど、コイツはまた恐ろしい相手を敵に回しそうな予感だなぁ・・!!!
* Re: コッペリオン-fragment-後編@ ( No.10 )
日時: 2010/09/11 20:36 メンテ
名前: BD

<カジワラさん

感想ありがとごぜやすー
なんか悪役を描写してるときが一番楽しい事に気付く。
ピカレスク大好きです。

ヴァネッサ&ワーグナーは一筋縄ではいかない悪役として今後も活躍させたいですね^^

さて、せっかく分割更新にしたんだし、そろそろ続きを完成させないとなあ。
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